女優深川麻衣さん
過去に、『コピーライター養成講座』を受講するか真剣に考えたことがあるという女優の深川麻衣さん。撮影中も、手にした本に視線を落とし、琴線に触れる一節を見つけると顔をほころばす。“言葉の力”に魅入られた彼女と読書の豊かな関係に迫ります。

「たくさんの本を読んできて感じるのが、書き手の人柄や生き方を紡いだ言葉ほど、読み手の心に沁み渡る力を持っているということ。それを初めて実感したのが、中学校の国語の授業で学んだ谷川俊太郎さんの詩『春に』でした。長い冬を経て迎える芽吹きの季節と、人の内に秘めたエネルギーが湧き立つ瞬間を見事にリンクさせた作品です。子供でも分かる言葉で綴られているのに、大人にも突き刺さる壮大な世界観がある。しかも、読み手に解釈を委ねているから、“皆も頑張っているから君も元気を出そう!”といったベタな押し付けはなく、なぜか読み終わると励まされている。子供ながらに、そんな不思議な力を感じました。果たして、心に届く言葉とは何なのか…。壮大ではありますが、自分なりの答えを求めて、偉人たちの格言や、自分の心に響いた文章をノートに書き留めていました。シェイクスピアの戯曲『ハムレット』の一節にある“世の中には幸も不幸もない。ただ、考え方でどうにもなるのだ”、詩人のプルデンティウスが残した名言“楽しい顔で食べれば、皿一つでも宴会だ”は、その一部です。どちらも、“何事もポジティブに向き合えば目の前の世界がいっそう楽しくなる!”という教えと捉えています。ただ、用いる言葉や文章の組み立て方はそれぞれで、そこに書き手の人柄や経験が紡がれていると思うんです」

「日常で目にする広告コピーも、格言に負けない“言葉の力”を感じます。CMや新聞、雑誌に載った広告をまとめた作品集をパラパラと読むのも好き。日めくり式の構成で広告コピーだけが羅列された『毎日読みたい365日の広告コピー』(編・WRITES PUBLISHING) は名キャッチの宝庫です。秀逸なコピーを考える人って、本当にすごいですよね。限られた字数で多くの人を引きつけるなんて、語彙力だけでなく、幅広い知識や経験の蓄積がないとできない。それは、きっと文章だけで表現する小説にも言えること。『七回死んだ男』(著・西澤保彦)や、『微笑む人』(著・貫井徳郎) といった好きなミステリー小説を思い出しても、一冊の中に、リアルに背中がゾクゾクとするシーンがある。言葉だけで、そこまで人の心を刺激するって本当に凄いことだと思います」

「森見登美彦さんの『有頂天家族』も心を揺さぶられた一冊です。独特の言い回しでグイグイと引き込まれていく“森見ワールド”は、読むたびに夢中になってしまいます。読了後も、その世界観からしばらく抜け出せないほど。あの余韻に浸る感じは、唯一無二の存在です。小説全般に言えることですが、映像や写真といった補足がなく、登場人物の容姿や情景といった“色付け”が、ほぼ読み手に委ねられているのも本が好きな理由のひとつ。綴られた言葉から、人の感情や表情、行間に込められた“間”を自由に想像したり、頭の中で場面をイメージする力は、お芝居をする上でも欠かせないものだと思います。これからも豊かな読書の時間を大切にしていきたいです」
おすすめの4冊はポイント10倍!

毎日読みたい365日の広告コピー
WRITES PUBLISHING
「“主婦にも、定年をください”や、“「全然勉強してないよ」リアルなのは俺だけだった”など、ページをめくるたびに、ヒネリの利いた文章の連続。私にとって、コピーライターは憧れの仕事だけど、これは絶対に思いつかない(笑)。月ごとにページの色を変えている構成もかわいいです」


七回死んだ男
西澤保彦
「主人公が、“反復落とし穴”という不思議な時間軸に入る設定で、殺された祖父を救うため、何度も時空をループして、あらゆる手を尽くすストーリーです。ミステリーでありながらSFとファンタジーの要素もあって、物語の構造がとても凝っている。これは、ぜひ映画化を期待したいです!」


微笑む人
貫井徳郎
「書店の店頭ポップに書かれていた“普通の人が一番怖い”というフレーズが引っかかって、手にしました。妻子殺害容疑で逮捕されるエリート銀行員。彼を知る人々は総じて“そんな男じゃない”とかばうのですが、事件を追うノンフィクション作家が犯人の意外な素顔に迫っていく。店頭ポップに書かれた異名を裏切らない一冊でした」


有頂天家族
森見登美彦
京都の下鴨神社の境内にある糺ノ森に平安時代から住みつく狸一家の物語。「アニメ化もしているので、知っている方も多いと思いますが、普段は人間に化け、たまに虎に姿を変えて暮らす狸一家の物語です。そのストーリーはもちろん、“ふあふあ(ふわふわ)”と表現する個性的なワードセンスは、まさに森見ワールド!」

深川麻衣さん出演ドラマ「まだ結婚できない男」
カンテレ・フジテレビ系全国ネット 毎週火曜よる9時放送中

2006年7月の放送から、13年。阿部寛主演でお届けする、2019年10月スタートのカンテレ・フジテレビ系火9ドラマは、『結婚できない男』の続編、『まだ結婚できない男』。令和を迎えた2019年、桑野信介(阿部寛)は53歳になっていた。果たして、あの偏屈だけどなぜか憎めない、桑野は令和の世でどんな日常を送っているのか…?

女優・深川麻衣さん
1991年、静岡県生まれ。2011年に乃木坂46の1期生として活動をスタート。2016年、グループ卒業。2018年、主演映画『パンとバスと2度目のハツコイ』でTAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。主な作品に、連続テレビ小説『まんぷく』(NHK)、初の主演ドラマ「日本ボロ宿紀行」(TX)、映画『愛がなんだ』、『空母いぶき』など。現在ドラマ『まだ結婚できない男』(KTV)にレギュラー出演中。
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