白蝶記 どうやって獄を破り、どうすれば君が笑うのか

るーすぼーい/〔著〕

発売日:2015年11月

  • 白蝶記 どうやって獄を破り、どうすれば君が笑うのか
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ISBN
978-4-08-631086-4

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商品説明

雪深い山に囲まれた児童養護施設で育った旭と樹。ある教団が運営している監獄のような施設でつらい日々を過ごしながらも親友・陽咲の明るさに救われ、三人は静かに過ごしていた。しかし、そんな彼らに悪意を向ける者がいた。旭や樹を勝手な言い分で叱り、いためつけようとする指導職員・小倉。旭は執拗な小倉の暴虐に反抗し、意を決して施設の園長に助けを求める。だが、その密告を知り、怒りを抑えきれない小倉が旭と樹のもとにやってきて耐え難い言葉と暴力で彼らを屈服させる。そして樹を“懲罰小屋”送りにしてしまうのだった…。自分の弱さを知った旭は、この不条理から逃れるために悪童と化し、復讐を誓う―!

ここからは物語の冒頭を一部公開!!

 人類が火を熾すよりも先に、発火の魔術に目覚めた世界。
 あらゆる理論や法則に、応用として個人の魔力資質の差異が組み込まれている世界。
 ソクラテスもプラトンも、ベートーヴェンもモーツァルトも、フロイトもユングも、ヒトラーもスターリンも、手塚治虫も藤子・F・不二雄も存在していたけれど、魔法がある世界。
 不思議な力が存在しても、結局は似たような歴史を歩んできた世界の物語。
 俺の事はボリスと呼んでもらいたい。とりえあずこれが、俺にとって自分の名前だと認められるギリギリのものだ。さしあたっては。
 この名前の由来はボリス・カーロフという、かの有名な『フランケンシュタインの怪物』を演じた俳優から、らしい。あまり愉快な気持ちのする由来ではないが、それでも困った事に俺に付けられた数々の異名の中では、これだけが唯一マシなものだ。他はどれもこれもひどいもので、そもそも人名として適当でないものばかりだ。
 断っておくが、俺は一応まともな人間だ。両親の顔も自分の本名も、本当の国籍も誕生日も知らないだけで、別に人造人間というわけじゃない。
 この名前を貰うまで俺の名前はただの数字だった。物心がついた時にはすでに俺は品の悪いゲリラのキャンプにいて「1015番」という番号で呼ばれる少年兵にされていた。そして今では地図から消えてしまった国の軍隊と戦わされ、人類に可能な最低の行為の数々を目の当たりにした挙句に捕虜となり、収容所でも「2416番」という囚人番号を付けられた。
 それから俺は収容所で過酷な洗脳的訓練と教育を受け、新たな忠誠心を刷り込まれた。赤い旗の下でも青い旗の下でも、どのみち俺は鼻をかんだら捨てられるチリ紙と同様の、安っぽい消耗品だった。
 しかし、いくらでも換えが利く消耗品の一つであるはずの俺は、何度危険な場所に放り出されても壊れなかった。俺には類稀な生存本能と、医者いらずの頑健な肉体と、いくら目の前で人が死のうと少しも精神が乱れない奇妙な神経の太さがあった。
 やがて、ある諜報機関の上官殿が俺の超人的な生命力に気づいた。彼は俺が換えの利かない珍しい道具である事を認めて、「ボリス」というまともな名を初めて俺に与えてくれた。
「同志ボリス。君こそは生まれついての人殺し、最悪の人間性を象徴する怪物だ」
 その後、俺の所属していた国家は崩壊して、前述の通り地図から名前が消えた。
 どれだけ恥を重ねても、命を絶たない限り人生は続く。

本編に続く

商品詳細

シリーズ名
ダッシュエックス文庫 る-1-1
出版社名
集英社
対象年齢
一般
フォーマット
文庫

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