ペストは冬、どこに潜むのか 満州で身を挺して解明に挑んだ医師

加藤紘捷/著

発売日:2023年4月

  • ペストは冬、どこに潜むのか 満州で身を挺して解明に挑んだ医師
  • ペストは冬、どこに潜むのか 満州で身を挺して解明に挑んだ医師
ページ数
362p
ISBN
978-4-909090-95-9
著者情報
加藤 紘捷(カトウ ヒロカツ)
1943年長春生まれ。早稲田大学法学部及び同大学院修士課程修了。英国Exeter大学大学院博士課程修了、法学博士(PhD.in Law)、ロンドン大学高等法律研究所客員研究員。駿河台大学法学部教授を経て、日本大学法学部教授、比較法学会理事会監事を歴任。駿河台大名誉教授

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商品説明

日本帝国主義下の旧満洲―過酷な環境下でペストに苦しむ患者の救済と感染経路の解明に挑んだ医師・加藤正司の事績を辿る。

満洲ペストというと、センシティブな問題として、ペスト菌を非人道的に扱った悪名高い戦前の軍部の仕業が連想されがちだが、満洲ペストはそれがすべてではない。戦前、満洲の地で蔓延するペスト患者を前に、治療と予防、また感染経路の解明に身を挺して挑んだ医師たちがいたのだ。その一人、筆者の父・加藤正司はペスト防疫所の所長として、他の防疫官職員とともにペスト発生地帯である広大な満洲平原に散在する村に飛び込み、身の危険を顧みず、ペストで苦しむ患者の治療と予防に献身した。
それだけではない。満洲のペストは、夏に激しく蔓延し、冬に終息するのだが、春になると再び頭をもたげ、翌夏にまた流行する。これを毎年繰り返している。加藤はペスト流行の根元は冬にある考え、従来からの畑リス説を覆し有菌ネズミ説を唱え、半家住性ネズミが冬、この主役を演じていることを突き止めた。そのことは戦前、満洲保健衛生協会誌に加藤論文として掲載されたが注目されたとは言えなかった。この発見は戦後、加藤の右腕だった長澤武が書き残した論考 「吉林省ペスト防疫所は何をしていたか」で明らかにされたが、学会レベルで関心がもたれたとは言えず、満洲ペストの防疫に立ち向かった加藤の事績は報われないままに終わるかに見えた。
ところが、平成に入り、日本医学史学会の会長である酒井シヅ教授の著書『病が語る日本史』のなかで満洲ペストの加藤たちの功績が取り上げられ、ようやく日の目を見た。満洲ペストの解明に身を挺して挑んだ加藤、そして加藤を支えた防疫官職員の労苦が一歩、報われたと思うのは筆者だけであろうか。
だからと言って、前提なしに加藤の事績を美化するつもりはない。中国の人々からすれば、如何なる立場に立つとしても、それは植民地統制の一翼を担わされたに過ぎないと思うかもしれない。しかし、現場の一線に立ち、いざ医療と研究に従事してみると、そこには夥しい数の満洲農民がいて、昔からペストに苦しんでいる。この惨状と困窮を見たとき、医者であるならば一日も早く救済したい思うのは当然であろう。
当時の加藤らは民衆に近い現場にいたし、ペストが発生すれば、もっとも命の危機に瀕するのは医療従事者であった。医療器具も不足するなか、加藤及び所員たちはできる限りを尽くして奮闘したのである。
本書は、加藤の足跡と事績を辿ることにより、終戦後帰国途上で殉死した加藤の人となり、加藤らペスト防疫所の職員たちが満洲ペストの防疫にどのように従事したか、そしてペスト研究の末に得た知見の中に後世に残しうる一条の光があったのだと、読者諸氏に思いめぐらせていただければ幸いである。

目次

口 絵
推薦文 国立衛生医療科学院名誉院長 林 謙治
はじめに
★序 章
★第一章 満洲ペストは冬、どこに潜むのか―加藤正司の事績を捉え直す
○第一節 ペストの怖さ、日本ではなじみの薄い疫病
1.ペストとペスト流行
2.検疫、隔離など
3.香港ペスト流行とペスト菌の発見
4.ペストの感染経路
○第二節 満洲ペストの歴史と特徴
○第三節 満洲ペストにかかわる二つの国立ペスト防疫所の設置
1.民生部令に基づく二つのペスト防疫区
2.二つのペスト防疫所の基本姿勢と特徴
3.前郭旗とペスト防疫所の建設
4.加藤正司、独立性の高いペスト防疫所へ赴任
5.加藤の身分
○第四節 人知れず一肌脱ぐ―ペスト防疫の現場に赴く
1.乾安県におけるペスト防疫
2.“真実をあからさまに見る”
3.人手不足の中で
○第五節 加藤の生涯の研究テーマ「ペストは冬、どこに潜むのか」
1.「ペスト菌の種継ぎ越年の謎と対決する研究」に没頭 
2.感染経路の調査の重要性―加藤論考「乾安県玉字井ペスト感染経路に就て」を読む
3.楡の木の下の訓示―徹底した感染経路の調査
4.長澤医師の新たな書簡の発見と加藤の有菌ネズミ説
5.通説「畑リス説」を覆す
6.冬、原発部落の土を掘り起こす覚悟
7.保菌ネズミの捕獲に成功―歴史に残る村落「新廟」
8.ネズミの体内にペスト菌発見―所長の感が的中
9.加藤の「炯眼と情熱」が論争に結末の門を閉めた―“部落内のドブネズミを徹底的にとれ” 
○第六節 満洲ペスト防疫の苦労が報わる―酒井シヅ『病が語る日本史』に掲載
★第二章 ペスト防疫の基本理念―国家や民族を超えた仁術
○第一節 満洲ペストと保健衛生行政の最優先課題
1.医師の絶対的不足と民生部の方針
2.大同学院を通じて医師の資格をもつ人材の掘り起こし
○第二節 ぺスト防疫の基本姿勢
1.最初の赴任地へ派遣されて
2.国境なき医師団的精神―インドとの比較
○第三節 危険極まりない命がけのペスト防疫
1.行政のパートナーである藤沼氏の証言
2.加藤はペスト防疫の最高指揮官
ほか

商品詳細

出版社名
ロギカ書房
サイズ
20cm
対象年齢
一般
フォーマット
単行本

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