さくらの谷
発売日:2020年2月
- ページ数
- 〔32p〕
- ISBN
- 978-4-03-333000-6
- 著者情報
- 富安 陽子(トミヤス ヨウコ)
1959年、東京都生まれ。和光大学人文学部卒業。『クヌギ林のザワザワ荘』により日本児童文学者協会新人賞と小学館文学賞、「小さなスズナ姫」シリーズにより新美南吉児童文学賞、『空へつづく神話』により産経児童出版文化賞、『盆まねき』により野間児童文芸賞と産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞
松成 真理子(マツナリ マリコ)
1959年、大分県生まれ。京都芸術短期大学(現、京都造形芸術大学)卒業。イラストレーター、絵本作家。『まいごのどんぐり』により児童文芸新人賞を受賞
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商品説明
夢語りから生まれた、あたたかく心みたす絵本。5歳から。2020年ホワイト・レイブンズ(ミュンヘン国際児童図書館・児童図書目録)選定、2021年、第52回講談社絵本賞を受賞
かつて、わたしが一度だけ行ったことのあるふしぎな谷のお話です。
まだ山が枯れ木におおわれる春の手前、林の中の尾根道を歩いていたわたしは、のぞきこんだ谷を見ておどろきました。そこだけが満開の桜にうめつくされていたのです。
聞こえてくる歌声にさそわれてくだっていくと、谷底で花見をしていたのは、色とりどりの鬼たちでした。鬼なのに、ちっともおそろしいという気がしません。まねかれるまま、わたしは花見にくわわります。目の前のごちそうは、子どもだったころ、運動会の日のお重箱に母がつめてくれたのとそっくりです。
「かくれんぼするもの、このツノとまれ」
ふいに、一ぴきの鬼がとなえると、鬼たちはたがいのツノにつかまって長い行列になりました。列の最後の鬼のツノにつかまったわたしは、かくれんぼの鬼をすることになります。わたしは、林の中をかけまわってさがすのですが、なかなか鬼たちをみつけることができません。
そのうちに、だんだんふしぎな気持ちになってきました。わたしがおいかけているのは、ほんとうに鬼なのでしょうか。だって、いま、あの木のうしろにかくれたのは、わたしのおばあちゃんのようでした。こっちの木のかげには、おかあさんが。そこの木のうらには、おとうさんがかくれました。それは、みんな、みんな、もうこの世をさってしまった人たちなのでした。
でも、そうか。みんな、ここにいたのか。桜の谷であそんでいたのか──。
そうわたしが思ったとき、風がふきわたり、谷じゅうの桜がいっせいに花びらをちらします。
気がつくと、わたしはひとりぽつんと雑木林の中に立っていました。満開の桜はきえていましたが、ヤマザクラの枝さきに、大きくふくらんだ花のつぼみが見えました。どこかで、あの鬼たちの歌声が聞こえるようでした。(「近刊情報」より)
<絵本ナビ情報 絵本ナビメンバーの声>
私の勝手な想像ですが、主人公の「わたし」は、もしかして、嫌なことがあって落ち込んでいたのでしょうか?そんな時に遭遇した、さくらの谷の鬼たち。さくらの谷は桜が満開で、お花見をしている色とりどりの鬼たちは、「わたし」を快く迎え入れてくれました。「わたし」はすぐに打ち解けて、一緒にかくれんぼをするまでになりました。けれど、かくれんぼの鬼となった「わたし」が木々を通して見る彼らの顔は、懐かしい顔ばかり。もしかして、「わたし」の落ち込んだ心がかつての人たちを呼んだのでしょうか。そうして、彼らとの触れ合いで元気になった「わたし」は、またきっと会えるからと、谷を後にしたのではないかと思いました。春の始まりにふさわしい、幻想的な絵本でした。(めむたんさん 40代・広島県 男の子20歳)
※お届け日が変更になりました
2月7日→2月10日
商品詳細
- 出版社名
- 偕成社
- サイズ
- 26cm
- 対象年齢
- 幼児
- フォーマット
- 単行本
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