統辞理論の周辺
発売日:2012年3月
- ISBN
- 978-4-384-03305-2
- 著者情報
- 渡瀬 嘉朗(ワタセ ヨシロウ)
東京外国語大学卒
東京都立大学修士課程修了、博士課程中退。1964年フランス政府給費留学生、パリ大学。1970年、同。1964年東京外国語大学講師、助教授、教授。1995年定年(62歳)により退官
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商品説明
序章
1.
幽かな記憶によれば,私は少年時代の末期,ドイツの詩人,リルケを愛読したようだ。彼の『マルテの手記』に関しては,造本の記憶や,父の筆跡の筆の字にいろいろ思い出がある。
第一回の渡欧の際,残念ながら図書の整理の方法を誤り当時の蔵書は散逸してしまったが,マルテと共に古い石畳を歩き,人間は孤独の中に,新しい自分を発見するのだと強く感じた自分を,私は永久に忘れない。
少年時代リルケを愛読した人間が青年時代,P.ヴァレリーに魅かれたのは,とりわけ,彼の「精神の危機」の文字に強く動かされたからである。当時の私は,「精神」をこうして真正面から取り上げる人が居ようとは思っても見なかった。私は彼を通じて精神を,経済や政治体制と同様,一つの生きた実体として捉えることが出来たのである。
しかし程なくして私は,詩でも哲学でもない,言語そのものに強い関心を抱くようになる。勿論,言語に対する私の関心は,詩や哲学や,人間の精神を背後から支える言語の仕組みに強く動かされている。
しかし,私は〈言語と精神〉とか〈言語と哲学〉といった,マクロな視点からではなく,言語に具わる,個々の仕組みを何時も言語の内部から,眺めるようにして来た。マクロな問題設定には,容易に,言語の側からの必要な資料が伴わないし,揃わない。代わりに,言語にそなわる小さな仕組みを一つ一つ眺めることで,その部分を様々に利用する人間の概念世界の仕組みが見えてくる筈だ。
勿論,言語の仕組みが,概念の仕組みをすべて解き明かすわけではないが,人間の概念世界の基本的な仕組みは言語に足を下ろし,そこから少なくとも,建築構造に具わる力を得ている筈である。
ことばが人間の精神活動を支えることが出来るのは,まず言語を構成している交換可能な要素が人間に大きな選択の幅を与え,それが,多様な思考の歩みを過不足なくなぞることが出来るからであろう。ここから見えて来るのは,とりわけ言語の柔軟な構造である。
その他
目次
話者の選択と発話の形成
「核」主導型の統辞機能について
「核」主導型の統辞機能(その2)―「が」再論
定冠詞と「自己」照応形式
「未完了」特性について
「代名態」の役割
表意対立とその中和
事態の参加者
統辞的切り取り
Latence,あるいは“潜在性”―とりわけ潜在的統辞特性をめぐって
ActuelとInactuel―「現在」と「半過去」、「大過去」
統辞行動の中の“態”―拡大再帰形式の解釈をめぐって
時制の理論のために―文意の分析と時制の対立
商品詳細
- 出版社名
- 三修社
- フォーマット
- 単行本
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