物静かな印象ながら、本のこととなると話が尽きないシンガーソングライターの家入レオさん。日本経済新聞「読書日記」に始まり、同誌でエッセイを連載するなど、自ら執筆も行なう読書女子だ。幼少期から、数少ない“遊び”だったという歌と本が、今は彼女を輝かせる大きな武器。自分の素直な言葉を紡ぐことと、読書との関係に迫る。
「良い曲を作るために、たくさん本を読む。そんな風に、多くの知識や語彙力を身につけたいと思っていたこともあります。ただ、それはとても不自然な流れで、必死に得るようなものではないと気付きました。今は本の数よりも、一冊に時間をかけて読み返す“読む質”を大事にしています。日常生活において、できるだけ “丁寧に生きたい”と思うんです。例えば、本を購入するとき、インターネットはとても便利ですよね。だけど、人工知能で“あなたのオススメはこれ”みたいなのが出てきたりするじゃないですか? あれって、確かに当たってはいるけど、自分の世界観から新しいことを見つけるきっかけが失われているようにも感じてしまう。だから、自分が信頼をおく人や、好きな作家さんがリコメンドしていることにも目を通して総合的に判断して、本を選ぶことにも時間を割くようにしています。よく気に入った本を人に勧めたり、貸したりするんですが、良いことが綴られているとページの端を折る癖があって、“あっ、この言葉に響いたんだー”って思われちゃうから心許した人じゃないとちょっと貸すのは恥ずかしいですね(笑)」
「いつか絵本が充実したちょっとした図書館を開きたいという夢があります。子どものときに読んでいた絵本を今になって読み返すと、大人になってからのほうが心に響いたりする。だから、絵本=子ども向けという固定観念をもつのは良くない。絵本は少ないページ数の中にメッセージが凝縮されています。限られた文章で表現するところは歌にも似ている気がします。私は曲の中に出てくる自分を“ボク”と表現して歌っていることが多いんですが、これは何事も、性別や年齢に囚われず、ひとりの人間として向き合うことが大切だという思いから。絵本でも小説でも、本は文章量を問わず、さまざまな経験をしているひとりが人生をかけて一冊にしたもの。だから曲を作る私にとって、他の人生観が得られる本の存在は絶対なんです!」
「実は、ショートスリーパーで睡眠時間は3〜4時間ほど。だから人より多くの時間、本に触れていると思います。場所や時を選ばず習慣になっている読書は、すぅーと心が落ち着く。ジャンルレスにいろんなものを手に取ります。全て作家さんご自身の言葉なんですが、読んでいると、これは実体験から成る言葉なのかなぁって感じることがあって。その人の人生が滲みでているようなものにグッとくる。そういう言葉に出会うと私も自分自身の言葉を紡ぎたいってパソコンに向かっていたりします」
おすすめの3冊はポイント10倍!
蝶々の纏足・風葬の教室
山田詠美
「山田詠美作品はすべて網羅するほど大好きです。少女が女へと変身してゆく思春期の感性をリリカルに描いた3編を収録したもの。一般的な価値観ではタブーとされている物事を、なんでそうなの?と突いてくる感じにやられます」
おおきな木
シェル・シルヴァスタイン
1964年、アメリカで出版。「1976年には日本で発売されましたが、2010年に村上春樹さんが翻訳したものが、特に好きです。木が少年に捧げる無償の愛がテーマで、大人になって読み返しても常に新しい何かを得ることができる」
風と木の詩
竹宮惠子
「昭和に描かれた漫画ながら全く古さを感じさない。高校時代から何度も読み返しています。一見、ボーイズラブ的なストーリーですが、その真意はもっと深い所にあって、若者が大人に成長する過程で抱く葛藤が感慨深い」
家入レオ
いえいり・れお/1994年、福岡県生まれ。17歳で作詞を手掛けた『サブリナ』でシンガーソングライターとしてデビュー。今年4月17日にはニューアルバム『DUO』をリリース。5月より全国ツアー『7th Live Tour 2019 〜DUO〜』を開催中。
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